■山登りでもしてみようかな? という軽い気分の人にも、一度登山用品店をのぞいてみて、できれば買ってみていただきたいと思うものがあります。ズボン(今はパンツというんでしょうか、スラックスでしょうか)です。登山用ならではの、いろいろな特徴が日常生活にも素晴らしく便利、ということが多いからです。
■まずは速乾性。最近は速乾性の生地が使われたスボンが格安価格でいろいろありますが、登山用のズボンは雨だけでなく、沢で転んだりしてビッショリ濡れても、歩いているうちに乾いてしまうというぐらい速乾性に特化しているはずです。そういう生地が必須となっていると感じます(その代わり、折り目などは軽視されているかもしれません)。その意味で対局的なのが木綿のジーンズで、いったん濡れると強張って歩きにくく、体温で乾かすなんてことは不可能です。もし替えのズボンがあったとしても、濡れたジーンズほど重く感じるものはありません。だから私はジーンズ製品は「登山には絶対にノー」としています。
■次に、登山用品のズボンは丈夫です。転んでも破れにくい、というイメージの頑丈さ、というよりは、縫い目があちこち綻びてくる不安がない、という感じです。縫製がきちんとしているという印象がありますね。というのは、登山用のズボンはいわゆる作業ズボンですからポケットが多かったりするんですね。純然たる作業ズボンにも最近は軽くて速乾性のものがありますからその安さはものすごい魅力なんですが、登山用の機能で一番重要なのは「歩きやすさ」ですから、イメージとしては「しなやか」です。しばしば驚くほどペラッペラなのにかなり丈夫、というものもあります。
■ちょっと特殊な雰囲気があるので、値段を見ながら比較してみようと考えるわけですが、価格アップ分の機能がどのようなものかというと、クライミング用(岩場対応)と冬山用(保温性)になるでしょうか。私がここで勧めたいのはそういう「高機能」部分ではなくて、「軽くて」「しなやか」「縫製がしっかりしていて」「価格が安い」というものですから、じつはそれがちょっと難しいんですね。……そこで例えば「1万円」という線を引いて、その下の価格帯のものがあるかどうかを「正価」にしろ「特価」にしろ、探してみるのです。
■まるでバーゲン狙いのような強引な紹介の仕方ですが、じつはあるんです。メーカーによってはまさにそういう、ここでいう登山入門用のズボンを作っているのです。私の妻は庭師ですが、いわゆる庭師という装束でなければ「登山用」が一番、と言っています。立ったり座ったり、ヒザをついたりする仕事着としてベストチョイスだと結論づけているようです。
■糸の会の皆さんの場合には「登山用品」から「スポーツ用品」へと視野を広げて、いろいろな掘り出し物を見つけあったりしています。スポーツ用品は登山用品とはロット(製造単位数)がちがいますから、ものによっては格安です。それに対して登山用品は各「ブランド」が機能面で競い合っていますから、その底辺の一番ベーシックな製品を裾野の広がりというイメージで作っていただきたいと思っているんですけれどね。そう言いながら、私はユニクロなどの「ファストファッション」の中にある、最新素材の低価格製品のなかの「スポーティ」なズボンをいろいろはいてみています。が、街から一歩はなれたら欠点だらけですね。「登山道」を歩くためのズボン、としては役不足です。それはたぶん「スポーツ用」としても中途半端で多量生産に向けたタウンユースの「スポーティ」止まりなんだと思います。
■いろいろな意味で「登山用」は一般的なタウンユースとはどこか折り合わないところがあるのかもしれません。でも、旅に出るとき、薄くて軽い登山用ズボンをザックやら、バッグに放り込んでおくと、便利です。それは登山用のシャツ類にも共通する特徴かもしれません。クシャクシャにしておいてもなんとかなるというピンチヒッターになります。また雨の日の旅なら、傘をさして、雨具の裾を切り落とした半ズボンをズボンの上からはいてみてください。ズボンのポケットに入れたもの(とパンツ)を濡らさないようにすれば、あとは濡れるに任せても問題ないことが多いのです。もちろん雨の降り方にもよりますが、帰路のバスや電車でシートを濡らす危険もほとんどないくらい、あっという間に乾いています。「登山用」のそういう融通むげ的対応力が、ちょっと独特でありがたいと、私は思っています。
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